右側の人について話そう

帰り道、今年の秋初めてのオリオン座を見た。
山の上、雲の切れ間に横臥するその姿に、秋の次には冬が控えていることを聞く。季節は巡る、いやおうなく。
そのことに少し焦りも感じる。
先週末見た月がもう半分に近くなっていて、けれど流れた時間よりもずっと遠く思える。

一人きり自転車を走らせている。疲れた体をサドルに乗せて、ほとんど無意識にペダルを漕ぐ。
流れる景色の端に、前述のように季節を見つけては過ぎ去る時間に焦りを思う。
大きなものの中の小さな自分。
ぎゅっと力を込める足。自分の力で前に進んでいると信じたい。
握りしめる右手を同じ力で握り返す幻の手。月を見上げる。闇の中気高く輝く光と、負けじと輝く星。
走る自分の右側にひたりと感じる。存在。
右手を握る。
右側の人、こちらを見ずに微笑んでいるとわかる。前を向いているとこちらを見つめていると感じる。そのささやきは聞こえなくても、3秒後、同じようにあたしも微笑む。
大丈夫。まだ走れる。
ぎゅっと握りしめる拳。そっと重ねられる幻の手。進め、と心が繰り返す。その先にあるものがまだ見えなくても。まだ、引き返す時ではないと。
助けてくれるわけではない、背を押してくれるわけでもない。ただふとした時に思い出す。
その人にもとるような生き方はしないと改めて誓う。繰り返される誓いは祈りに似て、その先に進む力に変わる。
願わくば。
いつかその存在を感じられなくなっても、しっかりと地に足をつけて立っていられますように。

Monthly 2009.10

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