冬の音雪の音

とぼとぼ帰り道、疲れた体にむち打って足を動かす。

パラ、パラ、と小雨。いっそ降らないでいてくれたら、もうちょっと気分も晴れるだろうに。
溶け残る雪をわざと踏んで歩く。湿り気を多く含んだ雪、じゃっじゃっと踏み荒らす。
アスファルトは雨に濡れて黒光り、街灯を反射している。そらはぼんやり灰色、低い雲に待ちの灯りが映っている。
除雪車の作った高い雪山を避けて歩く。しゃーっと融雪の水。時々変に大きく吹き出してるところがあって、うっかりすると服が濡れる。これもおなじみ。
ざーっと、ノイズのような車の走行音を遠く聞いてしばらく歩いていると、カラカラカラと小気味のいい音。トタン屋根に霰がぶつかる。街灯の下では飛び跳ねる小さな粒も見える。
足下、踏みしめる感覚ががらりと変わった。ジャリジャリ、ザリザリ、小さな霰を踏みつぶす感覚がちょっと楽しい。霰が当たるものによって音が違う。風と同調して緩急するのが、頬を撫でる風の感じと、音とでわかって奇妙な感覚。
道に広がる霰の粒はザラメをまぶしたようだ、と思ったのはお腹がすいていたせいかも知れない。
霰は少し強く降ったもののすぐに止んでしまって、見上げると雲の隙間に星が見えた。
しばらくもしない間に霰はすっかり形を消して、残ったのは静寂と緩い風。
傘を閉じてあるく。なんだか、短い間にいろんなものを見た気分だ。ちょっとだけ、狐につままれた気分もする。
騙されたみたいなあっけない感じ。
ちょっと立ち止まって、大きく息をする。ゆっくり吐いて、歩き出す。
冬の音雪の音

Monthly 2010.01

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